ルビ財団は、社会にふりがな(ルビ)を適切に増やすことで
あらゆる人が学びやすく、多文化が共生する社会づくりを目指します。
ファウンダー・評議員メッセージ
私はルビがもっと振られる日本社会の実現(再現)を夢見ています。
私は総ルビの本を読んで育ちました。 私が小さい頃、実家は本に溢れており、多くの壁が床から天井まで本棚でした。 当時は総ルビ(もしくは多くルビを振った)本が多く、しかもそれは怪人二十面相のような本だけでなく、 園芸本とか世界美術史とか、多岐にわたっていました。 そして私は本棚の下の方にある総ルビ本を次々に引き出して開いて、興味の赴くままに、色々な本を読んでいました。
例えば園芸本、苺の育て方。気温は何度から何度に維持しなければならない、そのためにはこんな方法がある、 水は1時間に何cc与える、肥料はリンと窒素とカルシウムと、その化学式は、という感じで、 或る意味科学の本でした。当時は新聞にもかなりルビが振られており、 最終面のラジオテレビ欄から見るのですが、政治・社会面もつまらないけどちょっと読んだりして、 何なんだろうこの水銀による病気は、などと思ったりしたものです。
ところが或る時からルビがあまり振られなくなりました。それは本だけではありません。 例えば最近でも、美術館に行って日本の室町時代や江戸時代の作品を見る時、 横に貼ってある説明文の多くの部分が、伝統的な工法だったり、材料だったり、 或いは作品の名前自体が、漢字で書かれていて、私でさえ音読することが出来ず、 そうすると全く頭に入らなくて、理解することも覚えることも出来ません。 英語の説明も付いていることが増えたので、そちらを見て、読み方を知る始末です。
小さい頃に読んだ漫画に「天才バカボン」があります。その中の或る話を鮮明に覚えています。 バカボンのパパが駅前の映画館で洋画を観て帰ります。するとママに何を観てきたのか聞かれます。 パパは「とにりぬじゃ!」と答えます。何でしょう?「風と共に去りぬ」なのです、パパは漢字が読めないから。 「かぜとともにさりぬ」だったら、まだ何か想像できます。「とにりぬ」じゃ何の思索も巡りません。
近頃の子供は漫画ばかり見る。当たり前です、総ルビだから。実際ルビが振られている本は、漫画以外にもあります。でもそれは子供の本なのです。科学、社会、政治、文化、宗教、小説。大人の本にはルビが振られていません。これらの本にルビが振られていれば、子供は好奇心に任せて、背伸びして、大人の本を読める、大人の世界を垣間見ることが出来ます。子供の本ではなく、大人の本にもっとルビを振ってほしいのです、子供のために。
英語圏では、この問題はありません。アルファベットという、全部ひらがなで書かれているようなものですから。音楽家は小学生や中学生でも、世界のトップクラスになり得ます。或いはそのための教育を受けられます。しかし日本では、科学・政治・社会・文化の世界では、先ずは漢字が読めるようになってからでないと、学習を始めることすら出来ません。しかし英語圏の子供は最初から好きな本を読みに行くことが可能です。
STEM/STEAM教育の理論では、子供が算数の問題を解けない原因のほとんどは、問題の意味が分からないからだ、と説きます。算数の問題に限らず、子供たちは読めなくて意味が分からないことに囲まれています。ルビがあれば、もっと子供が問題を理解できる。もっと自由に好奇心のある分野を追求することが出来る。
今こそルビを増やすべきだと思うのです。インターネット総ルビ図書館を作りたい。出版物にもっとルビが振られる社会-それは子供や外国人などに優しい社会-を取り戻したい。テクノロジーを駆使してルビが自動的に振られるルビ眼鏡を作りたい。
そんな想いを持っていたら、伊藤豊さんがその想いに共鳴してくれて、更にこの想いを実現しようと協力してくれる素晴らしい仲間が集まりました。
子供の学習を効率的に推進し、好奇心を発達させ、興味を自ら追究できる社会。外国人にも優しい社会。そして実は、私も含めた大人にとっても情報量が増える社会。ルビを増やす活動は、いわゆるインクルージョンを推進する活動です。
合言葉はルビフル!
多くの出版社、あらゆるメディア、学校、美術館・博物館、自治体が、ルビを振ることの社会的な意義を再認識して、ルビフルが日本中に広がることを期待しています。
ルビ財団ファウンダー 松本大
代表理事メッセージ
「人の可能性を引き出す」をテーマに17年間、スローガンという会社を経営した後に、次は非営利のアプローチで社会を良くする方法を考えているときに、松本大さんからルビの問題意識をお聞きして、ピンときました。そこからとんとん拍子で一緒に財団を設立するに至りました。
なぜ、ピンときたのか。それは3つの背景があります。
1つは、娘2人の子育て中でもあり、娘に読書の習慣をつけてほしくて本を買い与えているのですが、大人向けの本にはルビがないものが多く、読んでほしくても読めない本が多いことに不満を持っていました。
そしてもう1つ、私自身が起業して17年間ビジネスのことばかり考えてきたのもあり、小説や他のジャンルの本をあまり読まなかったのですが、数年前から少しずつ読むようになったときに、自分も読めない漢字が多いことに気づきました。この2つの観点で、ルビがもっとあっても良いのにと思っていたのです。
そして、3つ目に私個人のライフミッションが「誰もが気づいているわけではない独自の仮説で社会を良くする」であることもあり、ルビが社会を良くできるかもしれないという小さな仮説に動機がある自分がいました。
さまざまな観点からルビがもつ可能性を考えれば考えるほど、子どもに限らず大人も、そして外国人や学習障害のある人を含むあらゆる人にとって可能性を広げるきっかけになり得ることにも気づきます。小さなレバーで大きなインパクトを生める可能性にわくわくしながら、粋狂な取り組みを楽しみたいと思います。
ルビ財団代表理事 伊藤豊
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